大地真央

　冒頭、チェンバロによる音楽が、観客を一瞬にしてその時代へと誘う。

　東京・日生劇場で上演中の舞台「クイーン・エリザベス－輝ける王冠と秘められし愛－」（２６日千秋楽）。女優の大地真央（６３）とＶ６の長野博（４６）、Ｈｅｙ！Ｓａｙ！ＪＵＭＰの高木雄也（２９）の初共演も話題の作品だ。

　舞台は１６世紀のイギリス（正確にはイングランド）。国内を統治することに注力する一方、無敵艦隊で向かってきたスペインを撃退するなど、大国の侵攻に苦悩しながら政治的にも人間的にも成長する女王の姿を描く。

　演じるのは大地。即位前の２１歳の頃から４０年間を演じ分けるが、若々しさをきちんと演じ切るあたりはさすがの手練手管。舞台に屹立する姿、響く声は女王だ。

　父の代からエリザベスを見守り、彼女を支える国務長官ウィリアム・セシル（西岡徳馬）が新女王に就任するように伝えるが、当初、王位継承権が認められていないと躊躇する。だが状況は変化する。女王メアリの崩御を境に、エリザベスは運命に導かれるように統治者になる。人望があったようで、せりふ一つ一つから、その人柄が伝わる工夫が施されている。

　ともに政府を司る人物には恩讐を超えて力を発揮することを求め、適材適所の配置をする。反逆者のせがれの重用もいとわないほどだ。

　時系列が本当にテンポよい。人生がさまざまなエピソードに彩られた人物だけに史実の前後入れ替えはあるが歴史的出来事とともに物語は進む。

　戴冠式を終えた後の演説では、大地の声の出し方も表情も変わり、女王の風格を一段上げて漂わせる。極めつけのせりふは「私は結婚しました。イングランドという夫と」。同時に後継者の心配は不要、神が選び出してくれると宣言する。

　世継ぎを産まないという宣言にも等しい演説に周囲の受け止め方は真っ二つ。外国君主との政略結婚の話も舞い込む。だが、女王はひるまずわが道を進む。女の幸せは結婚という価値観が世の中を覆う時代に、女王自らがそれを求めず、国家の安寧を求めて生きることを誓う潔さ。そのことを伝えるせりふのたびに、大地が大きく映り始めるから不思議だ。

　時あたかも、令和を迎えたばかり。元首としての苦悩や背筋の伸ばし方、側近たちの思惑が描かれる物語に統治の重さなどに思いをはせながら入り込める。