著者

 

堀新一郎(ほり しんいちろう)

YJキャピタル株式会社代表取締役。

 

慶應義塾大学(SFC)卒業。Slerを経て、(株)ドリームインキュベータにて経営コンサルティング及び投資活動に従事。2007年より5年半、ベトナムに駐在。ベトナム法人立ち上げ後、ベトナム現地企業向けファンド業務に携わる。2013年よりヤフー(株)に入社しM&A業務に従事。2013年7月よりYJキャピタルへ参画。2015年1月COO就任、2016年11月より現職。日本を中心に総額465億円のファンドを運用。ファンド累計出資社数は100社超。東南アジアでは250百万ドルのEV Growth FundをEast VenturesとSinarmasと共同で運用。Code Republicアドバイザー、ソフトバンク(株)のグループ内新規事業開発・投資会社であるSBイノベンチャー(株)取締役、EV Growth Fundのパートナー兼務。

 

 

 

 

琴坂将広(ことさか まさひろ)

慶應義塾大学総合政策学部准教授。
数社の起業を経験の後、マッキンゼー・アンド・カンパニーの日本およびドイツを拠点に主に海外企業の経営支援に従事。その後、オックスフォード大学に移籍し、経営学の優等修士号と博士号を取得。立命館大学経営学部を経て、2016年より現職。専門は、経営戦略、国際経営、および、制度と組織の関係。慶應義塾大学政策・メディア研究科委員、上場企業を含む複数のスタートアップの社外役員を兼務。著書に『経営戦略原論』(東洋経済新報社)、『領域を超える経営学』(ダイヤモンド社)、分担著に『Japanese Management in Evolution』などがある。

 

 

 

井上大智(いのうえ だいち)

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程。慶應義塾大学総合政策学部学士。学部在籍時より琴坂将広研究会に所属、特に新興企業の経営戦略に関心を持ち、研究を行っている。共同執筆に『アントレプレナーにとって、平成はどのような時代だったのか』(KEIO SFC JOURNAL, 2018年)がある。

 

 

本書の要点

 

  • 要点1:アイディアを見つける段階では、情報収集が肝心だ。その分野について誰よりも詳しくなろう。
  • 要点2:初期のチーム編成は必要最小限でよい。この先どうなるか見通せない状況で大きなチームを作るのは危険だ。
  • 要点3:アイディアが見つかったら、本当に使い続けてもらえるかどうかを検証しよう。着目するのは顧客の「声」ではなく「行動」である。
  • 要点4:顧客を獲得したいなら、まず注力すべきはプロダクトの価値を磨くことであって、プロモーションではない。

 

 

本書の要約

 

アイディアを見つける

いいアイディアの見つけ方

 

事業のタネは最初から起業家の手の中にあるわけではない。

 

自分の経験や能力から着想を得たり、マーケットや社会の動向を見たりしながら、自分の心が突き動かされるような事業を構想するのが起業のスタートラインだ。

 

アイディアの見つけ方には大きく3つのパターンがある。

 

海外サービスの日本版を考えながらアイディアの具現化を進めていくのが「事例起点」。

 

他人が抱えている課題や、サービスを利用したときに自身が感じた不満からアイディアを練るのが「課題起点」。

 

スマホの登場など、ユーザーの行動や技術の進化・環境の変化にビジネスチャンスを見いだすのが「構造変化起点」である。

 

起業したいなら、情報収集を怠ってはいけない。

 

本書でインタビューした起業家たちはみな、自分が挑もうとしている事業領域について、誰よりも精通していると言えるまで情報収集をしていた。

 

原体験はあればなおいいが、なくてもいい。半年間も必死に情報収集すれば、業界の人にも引けを取らないくらいになるだろう。

 

アイディアの命運を分けるポイント

 

どんなアイディアも必ず、実現性の壁にぶつかる。

 

アイディアをお蔵入りさせないためにチェックすべきポイントを2つ紹介しよう。

 

まずは、「誰の何の課題を解決しているのか」だ。ターゲット、ニーズ、ペインポイントを明確にしよう。

 

ただ一人のユーザーをペルソナとして、ユーザー側の視点でアイディアを徹底的に吟味する。

 

自分のアイディアがそのユーザーの課題を根本的に解決できているかどうかが重要だ。

 

それができなければ事業の成長は見込めない。

 

次に、「数年後により多くの人に使われるサービスか」だ。

 

アイディアを探す際には、常に未来志向でなければならない。

 

数年後、社会がどう変化しているかを想像しながら、そのときに必要とされるサービスを考えよう。

 

視線の先を未来に据えて、まだ誰も気づいていないトレンドや兆候を先取りしてサービスを設計する。

 

これこそが起業の醍醐味というものだろう。

 

事例:市場を見誤り撤退

 

ココン株式会社の倉富佑也氏が起業したのは、学生のときだ。

 

起業するという夢を実現するため、大学を休学して中国上海に渡り、好物であったベーグル屋を開店した。

 

飲食業を選んだのは、現地の文化や商習慣を学びつつ、顧客と直接コミュニケーションできて、調達や採用も経験できると考えたからだ。

 

なんとか開店にこぎつけたが、売上が伸びずにわずか3ヶ月で撤退するはめになった。

 

何でも自分でやろうとしたため、オペレーショナルな業務に手間を取られて冷静な意思決定ができなかったことと、市場選びに失敗したことが敗因だと倉富氏は振り返る。

 

希望的観測で始めてはいけない。事業が成り立つかどうか、ユーザー視点で考え抜くべきだ。

 

次に目をつけたのはソーシャルゲームだった。

 

市場は世界的に拡大している一方で、日本国内では、グラフィックスの供給が追いついていない。これを海外にクラウドソーシングしてはどうかと考えたのだ。

 

本の要約サイトフライヤーから引用