著者

 

有森隆(ありもり たかし)

経済ジャーナリスト。早稲田大学文学部卒。

 

30年間全国紙で経済記者を務めた。

 

経済・産業界での豊富な人脈を生かし、経済事件などをテーマに精力的な取材・執筆活動を続けている。著書は『企業舎弟闇の抗争』(講談社+α文庫)、『日銀エリートの「挫折と転落」-木村剛「天、我に味方せず」』(講談社)、『実録アングラマネー』(講談社+α新書)、『経営者を格付けする』(草思社)、『ネットバブル』『日本企業モラルハザード史』(以上、文春新書)、『住友銀行暗黒史』『日産 独裁経営と権力抗争の末路』(以上、さくら舎)、『強欲起業家』『デフレ経営者』(以上、静山社文庫)、『異端社長の流儀』(大和文庫)、『プロ経営者』(千倉書房)など多数。『住友銀行イトマン 権力者の背任』(ネスコ・文春)は別名義。

 

 

本書の要点

 

  • 要点1:平成の日本はイノベーションが起きなかったが、かつての日本には起業家精神溢れる創業者がおり、今の日本を代表する企業を作り上げた
  • 要点2:トヨタやソニーなど、日本を代表する企業の創業家44家を解剖、解説し、100年に1度の変革期に活かそうとする内容だ。
  • 要点3:大成功を収めても後継者がいない、あるいは君臨し続ける。創業家としての今後の手腕を問われる。一方、創業家からの脱却に苦心している企業もある。

 

本書の要約

 

二代目には継がせない なぜ創業家なのか?

 

平成を一言でいうと、画期的なイノベーションが起きない時代だった。

 

米国ではGAFA、中国ではBATが台頭したが、日本には匹敵するIT企業は誕生しなかった。

 

しかし、かつて日本には新たな分野を開拓する力を持つ、起業家精神あふれる創業者がいた。

 

本書はその足跡をたどり、創業家一族を解剖、解説し、100年に1度と言われる産業構造の転換に向けて活かそうというものだ。

 

対象の44家として、トヨタやソニーなど日本を代表する企業から産業界に名前を残す創業者、既に支配が終わった創業家などを丁寧にフォローしている。

 

 

異端児でカリスマ・柳井正

 

ユニクロの柳井正は根っからの異端児だ。山口県宇部市で土建業を営む裕福な家庭の長男として育ち、早稲田大学を卒業後、ジャスコ(現イオン)に入社するも9カ月で退職。

 

宇部に戻り、父親が経営する小郡商事に入社した。普段着のカジュアルウェアを安価で提供するため、広島市に「ユニーク・クロージング・ウエアハウス」をオープンする。ユニクロはこの時の店名の略だ。

 

香港で品質の良いポロシャツを提供していたジョルダーノの創業者、ジミー・ライと1996年に出会い、

 

委託生産と自店販売の小売業であるSPAの日本展開を決意した。

 

その後「早い小売業」を意味するファーストリテイリングを社名とし、1999年2月に東証一部へスピード上場する。

 

国内のアパレルでは独り勝ち、世界でも第三位となったが、柳井がめざすのは世界一のアパレル企業だ。2

 

017年、柳井は情報を商品化する情報製造小売業をめざすと宣言する。

 

使いこなせていなかった顧客情報を活用し、消費者が欲しい商品を選んでから工場を動かすというものだ。

 

大成功を収めた柳井だが、後継者がいない。

 

息子二人を社内取締役につけつつ、柳井は血の継承より会社の成長を最大の価値としている。

 

社内の若手抜擢の情報もあるが、柳井に代わる異能が社内にはいない。

 

「引退しない」という終身宣言さえしている。

 

 

本の要約サイトフライヤーから引用