著者
和田秀樹(わだ ひでき)
1960年大阪府生まれ。1985年東京大学医学部卒業。
東京大学医学部付属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガ―精神医学学校国際フェローを経て、現在は精神科医。和田秀樹こころと体のクリニック院長。
和田秀樹カウンセリングルーム所長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。
著書に『感情的にならない本』『自分が高齢になるということ』『50歳からの勉強法』など多数。
本書の要点
- 要点1: 仕事に強いストレスを感じていても、たいていの人は真面目に出勤している。日本人は休むことを「甘え」ととらえ、恥ずかしいことだと考える傾向があるからだ。
- 要点2: 近年、濃い人間関係を嫌がり、広く浅くつき合うほうがラクだと考える人が多くなっている。しかし、広くて浅い人間関係を維持するのはかえって疲れるものだ。
- 要点3: 医療、人間関係、職場など、すべてにおいて選択権は自分にある。安楽になれる道を選んで、心身ともに穏やかで楽しい生き方(安楽生)をしよう。
本書の要約
なぜ、会社に行きたくないのか?
対人関係に苦痛を感じている
「会社に行きたくない」と思うことは、誰にでもあるだろう。
ゴールデンウィーク明けには、慣れない環境で緊張やストレスを溜め込んでしまい、“五月病”になる人もいる。
以前の五月病は、新入社員によくみられる症状であった。
しかし最近は、中高年の社員が発症することも少なくないようだ。
2018年の調査によると、労働者の6割近くが仕事や職業生活に関することで強いストレスを覚えていることがわかっている。
メンタルの不調によって出社できなくなる人もいる。
2017年11月1日から10月31日までの期間にメンタルヘルス上の理由から1か月以上休職した労働者がいた事業所の割合は6.7%、退職者がいた事業所の割合は5.8%だ。
働く男女を対象とした2019年の調査によると、「働きたくないと思ったことがある」と回答したのは84%。
その中で最も多かった理由は「人間関係がつらい」だった。
仕事そのものよりも、仕事にまつわる対人関係に苦痛を感じている人が多いことがわかる。
とはいえ、「会社に行きたくない」と思っていても、たいていの人は真面目に出勤しているはずだ。
日本人は休むことを「甘え」ととらえ、恥ずかしいことだと考える傾向がある。
「かくあるべし思考」に縛られている
今の時代、選ばなければ、仕事はいくらでも見つけられる。
行くのがツラい会社にしがみつかずとも、選択肢はいろいろとあるはずだ。
それでも、会社を辞めずにガマンすることを選ぶ人が多い。
その背景には日本人特有の問題点が2つある。
ひとつは「かくあるべし思考」だ。
会社は絶対に行くべきところであり、休むなんて許されないと思い込み、自分自身にガマンを強いている。
もうひとつが、物事を「二分割思考」でとらえていることだ。
「会社に行くのは善」「行かないのは悪」というように、極端な考え方をしている。そうなると、会社に行きたくなくても、耐えるしかない。
ガマンを続ければ、ストレスは溜まる一方だ。
ストレスを溜め続けると、心や体に異変が起こる。
ムリして会社に行く以外の選択肢があることに気づくべきだ。
自分より会社を守ろうとしている
第一に守るべきは自分の心と体の健康であって、上司の評価や会社の仕事が滞りなく進むことではない。
ところが、自分より会社を守ろうとする人が多いようだ。
ひと昔前は、長くつき合うことを前提に、会社は社員を家族のように大切にしてくれていた。
年を重ねることで昇給や昇進が望めたし、定年まで解雇の心配もなかった。
しかしバブル経済の崩壊によって不景気になり、会社には社員を守る体力がなくなった。
会社は新たな人事制度として成果主義を導入し、社員を守るどころか、リストラを断行することすらある。
会社が守ってくれないのであれば、自分の身は自分で守るしかない。
本の要約サイトフライヤーから引用
https://www.flierinc.com/