著者
石川善樹 (いしかわ よしき)
予防医学研究者、博士(医学)
1981年、広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。公益財団法人Wellbeing for Planet Earth代表理事。「人がよく生きる(Good Life)とは何か」をテーマとして、企業や大学と学際的研究を行う。専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学、概念工学など。近著は、『考え続ける力』(ちくま新書)、『継続とは「小さな問い」を立てること DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文』(ダイヤモンド社)など。
本書の要点
- 要点1:フルライフ(充実した人生)を実現するためには、限られた時間の中で、Well-DoingとWell-Beingのバランスをとることが必要だ。
- 要点2:人生は「ハードワーク期」「ブランディング期」「アチーブメント期」に分けることができる。それぞれの時期には、重視すべき「重心」がある。
- 要点3:真のWell-Beingとは、自分を忘れることで自分らしさを見出すことにある。
本書の要約
フルライフを実現するための時間戦略
フルライフとは
本書のコンセプトは、「時間の使い方に戦略をもつことで、フルライフ(充実した人生)を実現する」ことである。
時間には限りがあるため、やりたいことを全部やろうとすると、中途半端になってしまい後悔が生まれる。
逆にやりたいことを取捨選択したとしても、今度は捨てた選択肢に対する後悔が生まれてしまう。
限られた時間のなかで充実した人生を築いていくには、確信を持って前に進んでいくための「時間戦略」が必要になるのだ。
ここでいう戦略とは、ものごとの重心のことである。著者はフルライフを実現するための時間戦略について、Well-DoingとWell-Beingの重心を見つけることだとしている。
「Doing(する)」とは、明確な責任にもとづき、役割や責任を果たすことだ。
たとえば考えること、会議、仕事がこれに当てはまる。
一方で「Being(いる)」とは、特にそうした目標を持たずに過ごすことである。
仕事中の雑談やプライベートの時間がこちらに当てはまる。
この2つの時間をよりよい状態に保ちながら、限られた時間のなかで、Well-DoingとWell-Beingを最適に配分する。これこそがフルライフの重心をつかむということだ。
信頼の文化を築くために
Well-Being度が高い職場は、Well-Doing度も高いことがわかっている。Well-Being度が高まると、従業員の健康増進やモチベーション向上を通じて、生産性と収益性が向上するのだ。
それでは職場のWell-Beingの重心は何なのか。それは「信頼の文化」に他ならない。
「信頼」とは感情的な結びつきを含む、双方向の関係性のことだ。
一方向の理性的な「信用」とは異なり、「信頼」は多少のアクシデントでは揺らぐことのない連帯感を生み出す。
信頼の文化を形成するうえでは、次の3つのポイントに重点を置きながら、コミュニケーションをとるとよい。
・仕事は順調ですか?
・人生は順調ですか?
・ご家族は幸せですか?
1つ目の質問は、日々の仕事において学びや変化があるかの確認である。
人はたとえ成果が出ていても、ルーティンの繰り返しだけでは順調とは感じられない。
この質問は、1週間に1回ぐらい聞くとよいだろう。
2つ目の質問は、半年に一度ぐらい聞くと効果的だ。
「たまには仕事から離れ、でかい話でもしよう」というノリを持ち込むようにしよう。
3つ目の質問は、プライベートに踏み込むことになる。日頃から進んで、自分のことを話しておくのが望ましい。
信頼の文化を築くためには、このように仕事・人生・プライベートの全方位に気を使うべきである。
そうすれば相手は「ひとりの人間として認められている」と感じ、信頼の文化が醸成されていく。
時間戦略の全体像
まずは、長い仕事人生における時間戦略の全体像を確認したい。
最初にやってくるのが「ハードワーク期」だ。
下積みにあたるこの時期は、仕事をしても成功(=社会的なインパクトの大きさ)を勝ち取ることは難しい。
次に訪れるのが「ブランディング期」である。周りからの信頼を集め、仕事の幅を広げるこの時期は、急カーブを描くようにして、加速度的に結果が出始める。
そして最後に訪れるのが「アチーブメント期」だ。自分の仕事をどんどん社会に還元するようになる時期である。
このフェーズに到達するのは、早い人で50歳前後だろう。
本の要約サイトフライヤーから引用