【モスクワ＝小野田雄一】河野太郎外相は１０日、モスクワでロシアのラブロフ外相と会談した。昨年１２月に両氏が日露平和条約の交渉責任者に任命されて以来、会談は３回目。両氏は平和条約締結に向けた北方領土の帰属問題や北方領土での日露共同経済活動の計画などについて協議した。両氏は５月末に再び会談を日本で行うことで合意。ただ、最大の懸案である北方領土交渉では具体的な進展はなかったとみられる。

　会談後の共同記者発表でラブロフ氏は「第二次世界大戦の結果として南クリール諸島（北方領土）はロシア領になった」とするロシアの見解を日本が認めることが交渉の前提だとする考えを改めて表明。ロシアにとって「脅威」となる日米安保条約の存在も交渉の障害になりうるとした。一方で「両国関係には潜在力がある」とし、今後も交渉を進める考えを示した。

　河野氏は「会談で双方の隔たりを克服できたわけではないが、日露の真のパートナーシップが両国の戦略的利益だ」と指摘。「領土問題が解決されていないため平和条約が結べない」とも述べ、北方四島はロシア領で確定したとするラブロフ氏に遠回しに反論した。

　会談ではまた、５月末にラブロフ氏が訪日し、河野氏との会談や日露外務・防衛閣僚協議（２プラス２）を行うことも決まった。

　両国は昨年１１月、１９５６年の日ソ共同宣言に基づいて平和条約交渉を加速させることで合意。しかしロシア側は慎重な姿勢を崩しておらず、交渉は長期化が予想されている。