６日夜の安倍晋三首相とトランプ米大統領との電話会談は、外務省幹部が想定した時間を超え、約４０分間に及んだ。首相は「条件をつけず」に金正恩朝鮮労働党委員長と会談する考えを表明し、トランプ氏に日朝首脳会談実現に向けた支援を改めて求めたとみられる。同時に、北朝鮮が飛翔（ひしょう）体を発射したことを受けて、日米の強固な関係を改めて示すとともに、昨年６月の米朝合意に基づく朝鮮半島の完全な非核化に向けて中国やロシアと連携することも強調し、対北朝鮮の「圧力」路線を継続する姿勢も示した形だ。

　「条件をつけずに、金氏に直接向き合う考えだ」

　首相は電話会談でトランプ氏にこう述べた。会談後、記者団に対しては金氏との会談では拉致問題の解決が最も重要になることも強調した。

　政府筋によると、金氏はベトナム・ハノイで２月下旬に行われた２回目の米朝首脳会談でトランプ氏に対し、日朝間の課題として拉致問題があるとの認識を示し、安倍首相と「会う用意がある」と発言した。

　首相はこうした金氏の考えをトランプ氏から伝え聞き、１日の産経新聞のインタビューで「条件をつけずに金氏と会って、率直に、虚心坦懐（たんかい）に話し合ってみたい」と、踏み込んだ発言をしたとみられる。

　表立った北朝鮮側の反応はまだないものの、政府高官は「北朝鮮は日本の国会審議などもよく見ている。首相の言い方が変わったことも伝わっているのではないか」と分析する。

　一方、北朝鮮が４日に飛翔体を発射したことについて、政府内には首相の「条件をつけず」発言との関係を指摘する向きはない。米朝交渉が２月の米朝首脳会談の決裂で停滞しており、「米韓が過度に反発しない範囲の行動で米朝協議を動かしたいということなのではないか」（外務省幹部）とみている。

　むしろ、４月下旬に金氏が訪露し、プーチン大統領と初会談した直後であり、「ロシアはメンツをつぶされた形だ。まさかロシアが『やれ』と言ったとは思えない」（同）という。

　首相は記者団に、北朝鮮への対応は「トランプ氏と完全に一致している」と述べるとともに、「朝鮮半島の非核化については、プーチン氏とも中国の習近平国家主席とも認識を共有している」と強調した。（原川貴郎）